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ゲヘヘのchika郎、笑かしなやもう 2

チカオアーカイブ 過去にご馳走様して来た映画・ドラマ・本への感謝の念を込めて

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ 映画レビュー50選(6)

 性転換の手術に失敗した主人公の歌う歌詞が「アレの長さが6インチから5インチ減って残りは怒りの1インチ」、、、こうやって文章にするだけでも監督・脚本・出演すべてをこなしたジョン・キャメロン・ミッチェルの才能がわかる。
 演劇や映画の脚本に、人間の完全体であったとされる雌雄同体的イメージ、「つまり(男・男)(女・女)(男・女)がゼウスによって二つに引き裂かれて現在の愛が始まった。」とするテーマを引っ張って来る事は、そう珍しい事じゃない。
 けれどそこから畳みかけるように「これ以上、神によって引き裂かれたら、目が一つ、腕が一本、脚が一本で生きなくちゃならない。(僕)を否定すれば、僕は破滅する。」って言葉を凄い勢いで打ち出してくる所がこの人の才能なのだろう。
 映像的には驚くような斬新さはないにせよ、充分に美術的な空間を銀幕に作り出せる能力をもった人のようだ。
 しかしそれを全面に出さずに、あくまで映像を、ミュージカルと物語の進行に絡めていく姿勢を見せるのはこの監督が舞台人だからだろうか。
 勿論、その姿勢はこの映画において大きく成功している。
 ただ、主人公ヘドウィグのかりそめの夫イツハクを演じるミリアム・ショアが本物の女性であることが微妙な「ずれ」となって映画の最後に現れていたような気がする。
 chikaは最初、このイツハクが「男になりたい女」なのだと思っていた。
 それにしてはイツハクが隠れてヘドウィグのウィッグを被りたそうにしているシーンなどが矛盾しているなと、、。  正式なところで言うと、脚本上でイツハクは、潜在的に女装者にあこがれている男性という設定らしい。
 それでも最後にイツハクがヘドウィッグと袂を分けようとする時「もう疲れたんだよ。お前も本当は疲れているんだろう。」という台詞をヘドウィッグに吐くシーンがあるのだが、これなどは「私はもう男の格好(生き方)をしているのに疲れた。お前も女の格好じゃ疲れるだろう。」と読み替える方がスムースのように思える。
(実際、その台詞の後にひげ面のイツハクが、グラマナスな美女に変身するシーンがある。これなど念願の夢が叶って女装美人になったというよりも、イツハクが女性に回帰したら実はこんなに綺麗だったという感じに見える。)
 その他、少年時代のヘドウィグ(ハンセル)が父親に犯された事、青年期の女装とホモセクシュアルの関連が曖昧な事、母親が自ら進んで東ドイツに移り住んだのに、息子のハンセルがドイツから脱出する為に性転換手術を必要とした時、病院を紹介してやったりと、よく考えると説明不足の部分がたくさんある。
 勿論、映画の方はそれらを含んでも、充分に面白い。
 東西の冷戦や「性」にまつわる興味深い色々なエピソードを全て、おおまかな部分で辻褄が合えばいいやと言う感じで、ヘドウィグという人物を通じて書き出していく手法が爽快だ。
 この手法が観客に受け入れられるのは、それらの各エピソードに共通する監督の「ストレートな想い」が巧く伝わってくるからだろう。
 つまりその共通項とは「ロック」な「愛の起源」を求める心。
 しかしまあコーカソイド系の顔立ちって女装にホントに映えるのねぇ。
 それにハリウッドというか、向こうのショウビジネス世界のメーキャップ技術って、ため息がでるほど凄い。
 青年時代のヘドウィグってまだいかにも女装者っていう感じなんだけど、トミー(主人公の失われたカタワレ)と出会う頃の彼は、体型は別にしてほとんど「綺麗」といっても良いくらいなんだから。
 で土台は青年時代の彼と同じな訳で、、つまりメイクアップ技術だけで、意識的に「綺麗」の年代進化グラデーションを作り出せるということなんだね。(羨ましい、、。)
 でも、ヘドウィッグが自分のステージを隠れてみているトミーに顔の汗を拭いたハンドタオルを投げ渡すシーンには思わず苦笑しちゃった。
 だってハンドタオルにヘドウィックの顔が厚塗りしたファンデ・口紅、マスカラで転写されているんだもの。
 この辺のジョーク感覚がオカマというかドラァグクィーンのりなんだよね。
 同じように「今日も鬘を被ってメイクアップ・ルンルン」っていう歌も楽しいよ。
、、、でも「やがて悲しき」なんだけどね。 、、だからこそショウビズなんだよ。

PS 映画の中で、ヘドウィック率いるバンドが演奏するときの環境映像仕立てで見せるアニメが素敵です。
 ちょっと前に日本でもイラスト界に「ヘタウマ」っていうジャンルが確定したけど、これには「ヘタウマ」よりもうちょっと素朴なアート性を感じるなあ。
 制作はエミリー・ハブリー。
 まあ考えてみればこのアニメと合うって事自体が、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」がナイスな映画だという証明だと思うけど。









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